性器ヘルペスの原因

総論

性器ヘルペスは『単純へルペスウイルス』への感染によって引き起こされます。
感染経路のほとんどは性行為であり、感染後2~10日ほどの潜伏期間を経て発症します。
「性行為なんてしてないのに、気づいたら性器ヘルペスになってた」という人は、日常生活の中にある性行為以外の感染経路によって感染した可能性も考えられます。

また、性器ヘルペスの場合、初めてウイルスに感染した時には何も症状が現れない事がほとんどです。
無症状で感染したウイルスが体内に潜伏し、何年か経ったあとに急に性器ヘルペスとして発症するケースは珍しくありません。
このようなヘルペスウイルスの特性が、感染経路の特定を困難にしているのです。

ヘルペスウイルスの概要・特徴

性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス1型および2型によって引き起こされます。双方とも非常に感染力の強いウイルスであり、感染者の皮膚表面に起きた水ぶくれの中や、性器・口腔内の粘膜の中でも増殖を繰り返します。

厄介なのは、性器ヘルペスの症状が出ていない時でも、感染力を有しているという点です。いくら症状が出ていないときであろうと、性行為に及ぶ際には必ずコンドームを着用しましょう。

ヘルペスウイルスには二つのタイプが存在します。

単純ヘルペスウイルスには、以下のタイプが存在します。

多くの日本人が感染している身近なウイルスであり、HSV-1型には70~80%、HSV-2型には2~10%の日本人が感染していると言われています。
参考:グラクソ・スミスクライン株式会社 ヘルペス情報サイトより

ふたつのうち、HSV-1型は口唇ヘルペス、HSV-2型は性器ヘルペスの原因ウイルスです。1型と2型には、人体に感染した後に潜伏する部位に違いがあります。

1型は主に上半身の神経節、2型は主に下半身の神経節に潜伏する特性があるのです。上半身に住む1型は口唇ヘルペスを、下半身に住む2型は性器ヘルペスを発症します。

しかし、単純ヘルペスウイルスのわずらわしい点は、1型は口、2型は性器と、明確に分け切れないところにあります。近年では性行為の多様化により、今までは見られなかった、性器からHSV-1型が検出されるようになっているのです。

日本皮膚科学会の資料によれば、急性型性器ヘルペス患者100例のうち、HSV-1型が検出されたのは67例、HSV-2型が検出されたのは33例でした。
初めてヘルペスウイルスに感染して性器ヘルペスを発症した場合、HSV-2型よりもHSV-1型による発症が多かったのです。

性器ヘルペスの原因となるウイルスは、単純ヘルぺスウイルス1型、単純ヘルぺスウイルス2型、両方が考えられます。

単純ヘルペスの臨床病型とウイルス型 | ヘルペスと帯状疱疹 Q4 - 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)
画像引用:単純ヘルペスの臨床病型とウイルス型 | ヘルペスと帯状疱疹 Q4 - 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)

また、先ほどの資料では、再発型性器ヘルペス患者319例のうち、HSV-1型が検出されたのは17例、HSV-2型が検出されたのは266例でした。
性器ヘルペスが再発したときは、8割がたHSV-2型が原因です。

ウイルスのほとんどは不顕性感染のあと潜伏感染をします。

ウイルスに感染したらといって、必ず性器ヘルペスが発症するわけではありません。

性器ヘルペスの場合、感染したときは何も起こらずに、ウイルスが不顕性感染(ふけんせいかんせん)してしまう事がほとんどです。
不顕性感染とは、何も症状を起こさずに感染する感染パターンの事です。
ヘルペスウイルスの多くは、不顕性感染によって、感染後に潜伏感染に移ります。
潜伏感染とは、感染はしているが、何の症状も示さずに体内に潜伏し続けている状態の事です。
潜伏感染をしているウイルスは、免疫力の低下などによって再活性化して性器ヘルペスの発症に至ります。

ヘルペスウイルスは、一度でも感染したら一生完治する事のない病気であり、生涯に渡って、潜伏と再活性化を繰り返し続けます。

参考:東京大学医科学研究所・感染症国際研究センター ウイイルス第60巻 第2号 p.189より

因みにすべてが不顕性感染をするわけではなく、感染後すぐに症状の現れる『急性型性器ヘルペス』が起きるケースもあります。
急性型性器ヘルペスの場合、2~10日ほどの潜伏期間を経て発症します。

参考:日本性感染症学会誌 性感染症 診断・治療 ガイドライン 2016 p64より

無自覚の感染者が感染を拡大させています。

ヘルペスの厄介な所は、感染者にヘルペスの症状が現れていなくても、感染力を有しているという点にあります。
ヘルペス感染者は、たとえ何も症状がなくても、粘膜や体液からウイルスを排泄している事があるのです。

この排泄されたウイルスも十分な感染力を有しており、性行為によって粘膜が触れる事でヘルペス感染が起きてしまいます。

感染源と考えられる性行為のパートナーの70%は、無症候または非認識であるといわれている。

引用:日本性感染症学会誌 性感染症 診断・治療 ガイドライン 2016 p66より

実際にヘルペス感染の70%が、無症状のウイルス排泄時に行った性行為によって起きているのです。無症状時のウイルスの排泄は、以前にヘルペスを発症してから1年以内の感染者の場合に特に多く見られるとされています。

参考:日本皮膚科学会 皮膚科Q&Aより

性交時には、必ずコンドームなどを装着し、粘膜が直接触れ合う事になるオーラルセックスは避けましょう。

また、上の引用元からも分かるように、感染源となった人の中には「自分はヘルペスに感染している」という事に対して"非認識の感染者"が存在します。この非認識の感染者が、無防備に性行為を繰り返してしまう事が、ヘルペスの感染を拡大させている一因でもあるのです。

因みに、症状の有無はウイルス保有者の免疫力等によって左右されますので、必ずしもウイルス自体に問題があるわけではありません。

無症状の人から感染したウイルスが、別の人の体で症状を引き起こす可能性は十分にあります。

女性の方が感染しやすいという特徴があります。

性器ヘルペスの感染者数は、男性と比べて女性の方が多いとされています。実際に厚生労働省で発表されている、平成28年度の性器ヘルペス感染者数を見比べると、男性感染者数3,619人に対し、女性感染者数は5,555人でした。

参考:厚生労働省 性感染症報告数より

また、アメリカで行われたヘルペスの感染リスクを調査するための臨床試験からも興味深い結果が得られました。
男女どちらかがヘルペスに感染しているカップル144人組を対象として、観察が行われたのです。結果的に性器ヘルペスが男性から女性へ感染する確率は16.9%なのに対し、女性から男性に感染する確率が3.8%でした。
つまり、一度の性行為で感染する確率は、女性から男性よりも、男性から女性の方が4倍以上高いという事がわかったのです。

参考:Risk factors for the sexual transmission of genital herpes. - PubMed - NCBIより

ヘルペスウイルスの感染経路

ヘルペスウイルスは粘膜との接触によって感染します。その感染経路は性行為による直接的なものだけではありません。ヘルペス感染者が触れたものを介して、間接的に感染してしまうこともあるのです。また、産道や胎盤を感染経路として、母子感染が起きる事もあります。

あらゆる性行為

性器ヘルペスの主な感染経路は、性行為による粘膜への接触感染です。セックスだけでなく、以下のようなあらゆる性行為が性器ヘルペスの感染経路となります。

これらの性行為によって、ウイルスが粘膜に接触する事でヘルペス感染が起こります。特に、感染者に性器ヘルペスによるものと見られる症状が現れている場合は注意が必要です。

病変部にはウイルスが大量に存在しているため、一度の性行為でも高い確率で感染します。病変部は性器を中心に肛門、臀部、太ももなど広範囲にわたって見られますので、コンドームを装着したとしても十分な予防にはなりません。また、粘膜同士の直接的な接触以外でも、ウイルスの付着した手で手淫などを行い、間接的に性器などの粘膜に触れることでも感染してしまうのです。

日常生活の中にある感染経路

ヘルペスの感染経路は必ずしも性行為だけではなく、日常生活の中にも存在します。日常の中にある感染経路としては、以下が挙げられます。

間接的であれ、性器が直接触れる機会のある場所は感染経路になり得ます。自分、もしくは家族や恋人が性器ヘルペスを発症している場合、タオルなど体に触れる日用品の共有は避けましょう。また、男性の場合は、洋式トイレを使用する際に、ペニスの先端が便座に接触しないように注意が必要です。

母子感染

母親の性器ヘルペスが原因となり、赤ちゃんがヘルペスに感染してしまう事があります。母子感染のパターンとしては、以下の2つが挙げられます。

このうち産道感染が全体の85%、胎内感染が5%を占めていると言われています。

参照:本田まりこ(2014)「帯状疱疹・単純ヘルペスがわかる本」p.116

産道感染は、出産時に赤ちゃんが病変部などからヘルペスウイルスに触れてしまう事で起きます。(胎内感染はウイルスが胎盤で増殖し、胎児血液中に移行する事で発生します)よって、症状が悪化しやすい初感染による急性型性器ヘルペスの場合では、高い確率で赤ちゃんにヘルペス感染が起きてしまうのです

母子感染のリスクは、初感染で は 50%と特に高く、再発では 0~ 5%程度といわれている。

引用:日本性感染症学会誌 性感染症 診断・治療 ガイドライン 2016 p67より

以上の事から、妊婦に性器ヘルペスの症状が見られる場合、帝王切開による分娩がすすめられます。

再発する原因

ヘルペスウイルスは、一度感染すると完治する事はなく、生涯にわたって再発を繰り返します。再発の原因は、疲れや体調不良など様々です。

では、再発の引き金となるのは、具体的にどのようなことでしょうか。以下、リストで見てみましょう。

疲れや発熱といった体調不良だけでなく、ストレスによる精神的な影響も、ヘルペスを再発させる原因となります。再発を繰り返している人は「どんな時にヘルペスの再発が起きるのか?」を考えましょう。疲れから再発が起こっているのであれば、疲れを取り除くための対策が必要です。ストレスが原因なら、意識してストレスを発散して性器ヘルペスを予防しましょう。

感染に心当たりの無い人は、性行為以外の感染経路かウイルスの再活性化が考えられます。

性器ヘルペスの原因となるウイルスは、単純ヘルペスウイルス1型、2型の両方です。

性器ヘルペスの主な感染経路は性行為です。ですが、感染者が使ったタオルやお風呂のイスからも、ヘルペスウイルスが感染する場合があります。

また、性器ヘルペスの多くは再発型であり、今まで何の症状も無かったのに、疲れやストレスなどが引き金となり、突然発症する事もあるのです

感染経路に心当たりが無い場合は、性行為以外の感染経路による感染か、既に感染していたウイルスの再活性化を疑いましょう。



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